COMPUTER USERS' SYSTEM AWARD 2002 社団法人 電子情報技術産業協会 JEITA
サーバ・ワークステーション事業委員会
コンピュータ・ユーザーズシステム・アワード2002
平成13年度 ミッドレンジコンピュータ・ワークステーションに関する市場調査報告書
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最優秀賞 優秀賞 優秀賞 優秀賞 優秀賞
JEITA優秀賞:販売管理システム(株式会社インス)
表彰
受賞者 株式会社インス
受賞システム名 販売管理システム
システム概要 取引状況把握のための
アパレル業界向け販売管理システム
活用サーバ オフィスサーバ
端末台数 9台
システム稼働時期 2002年1月
  ■ 受賞のことば
三木 得生 氏
代表取締役
三木 得生
今回のシステム構築に関しては、半年以上の時間をかけて、社員全ての意見を取り入れた構想づくりを行いました。その過程で、それまで言いにくかった業務システムに対する不満や各々の考えを伝える場が生まれ、社内の結束を高めることができました。それが今回の受賞につながったのだと感じています。よいシステムは時間や手間隙をかけないとできないということを痛感いたしました。
  ■ 組織概要
株式会社インス

1986年に設立。当初、レディースアパレルとして出発し、90年より現在の業態に転換、現在に至る。全国に向けてメンズカジュアルやスポーツウェア、雑貨などの専門小売業店向け卸販売を行っている。
株式会社インス
  ■ システム開発の背景
ヤングカジュアル衣料の輸入・販売を主に行っている株式会社インス。欧米からブランド力のある商品を扱うことで業績を上げてきた同社だが、アパレル業界の産業構造の変化は時代の流れを受けも大きく変化していった。定番商品を回していれば効率よく売り上げを伸ばせた時代はすでに過去のものになりつつある。消費者の嗜好の多様化が進むにつれ、他種類の品物の小口取引が現在の主流となっている。

「ここ数年で多品種少量化の流れは進み、それに伴い収益性は悪化していきました。さらに、無理・無駄な仕入れ、売り逃し、在庫過多といった経営上の問題が一気に吹き出しました。転機となったのは、無駄に仕入れすぎた商品を処分するときに不渡りを掴んでしまったことでした」

経営上のピンチを経験したことで、同社はすでにあった販売管理システムを土台に、新しい時代に即したシステムへ大改造する決定を下す。「小口取引によって煩雑化した事務処理を簡略化する」、「正確な在庫数を常にモニタし、死筋商品を的確に把握する」、「受発注のバランスを常に把握する」といった明確な経営戦略のもと、システム開発方針が決定された。

「少数精鋭のスタッフでどうやって膨大な業務をこなして収益を上げていくか、また実際の経営状態を数字で把握できるようにしておきたい、という思いでした。300近くあるお客さまから直接電話で問い合わせがあった場合も、これまでのように『担当者がいないと答えられない』では話になりません。商品がどうなっているのか、出荷状態はどうか、という問い合わせに対し、倉庫に確認後、折り返して電話するなど、相当のロスが発生していました。それを何とか解決していきたい、という思いもありました」

同社のような卸売業、特に流行りすたりの激しいアパレル業界における卸売りは、常に他社に先んじた者が勝つ。 販売管理システムの導入は、これまで営業活動の足を引っ張っていた事務処理の時間を減らし収益性を上げること、適切な在庫状態の把握、営業支援の強化で競争で優位なポジションを占位すること、そしてそれらをチェックする管理体制の強化がテーマとなった。もちろん、ベテラン社員の培ってきたノウハウをシステムに組み込むことで、営業活動全体のボトムアップも視野に入れていたという。
  ■ 「受注入力」画面の様々な便利機能
「受注入力」画面の様々な便利機能
  ■ システムの特長
三木 得生 氏
代表取締役
三木 得生
同社の販売管理システムは受注〜出荷〜売上〜請求・入金という業務と発注〜入庫〜仕入〜支払という業務を一貫してサポートするためのシステムだ。紙の伝票を切って動いていた取引は、全て担当者が自分の端末を見ながら進める形に改められた。

最大の特長はアパレル業界特有の機能を盛り込んだ点にある。

仕入れた商品を各顧客に分配する「振り分け」と呼ばれる作業も通常の取引と同じく「A社の赤のTシャツMサイズを2枚」といった極めて小さな規模で行われるが、このシステム導入によって集計作業が大幅に楽になったという。商品は1シーズンごとに入れ替わり、同じメーカーの商品でも年が違えば別商品として扱われる。

商品点数は1シーズンあたり1000点以上だが、もちろん在庫はすべて色・サイズ別で単品管理されており、現在庫・受注残・発注残は画面上ですぐに知ることができる。出荷漏れや売上漏れといったさまざまなミスを防止することで、顧客に対する信頼度も上げる効果も狙っている。加えて、メーカー品番のない商品等を発注した場合でも、一度入力してしまえば自動的に商品番号を登録する仕組みを備えているため「発注書を書かないので担当以外ではわからない商品」が発生するのを防ぐことができた。

さらに、このシステムには死筋商品を洗い出す「見切り処理」もサポートされている。各在庫の売れ行き状況や滞留日数などのデータを常にチェックし、ある水準以下の商品が見切り検討として出力される。その商品を見切り処分するか、それとも監視しつづけるかの判断は人間が行う。

「これまではちょっとよそ見をしていると、仕入れたけれども存在が忘れられてしまう在庫が発生することがありました。どんなに高収益を上げた商品でも、デッドストックが発生すれば見切り品として処分すれば収益性がどんどん落ちます。この見切り品の一覧は、出社して端末の電源を入れた時に最初に表示されますので、死筋は必ず目にとまるようになっています」

もちろん、このシステムは単なる販売管理システムとしてではなく、会社の経営指標や個人の会社への貢献度を見るためのツールとしても使われている。担当者ごとに売上・仕入れでどれだけ貢献しているか即時にアウトプットが得られるため、営業マンは常に粗利を意識し、仕事に対し真剣になってきたという。逆に経営指標は随時、誰にでも閲覧できるようになっているため、マネジメント側は会社の状態を随時把握することができる。
見切り決定・検討伝票 主要経営指標問い合わせ画面
見切り決定・検討伝票 主要経営指標問い合わせ画面
  ■ システムの将来展開
同社のシステムの成功は、単なるコンピュータシステムのグレードアップではなく、コンピュータを含めた業務システム全体の見直しにあった。 このシステムの構築に際しては社内ヒアリングを入念に行い、システムに対する要求や機能を1つひとつ固めていったという。現在もシステムの運用に同社なりの工夫を加え、より効率的な業務処理の枠組み作りと、さらにベテランのノウハウを若手に引き継ぐ仕組み作りを行っていくという。