COMPUTER USERS' SYSTEM AWARD 2002 社団法人 電子情報技術産業協会 JEITA
サーバ・ワークステーション事業委員会
コンピュータ・ユーザーズシステム・アワード2002
平成13年度 ミッドレンジコンピュータ・ワークステーションに関する市場調査報告書
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JEITA最優秀賞:CHaTNet(学校法人玉川学園)
表彰
受賞者 学校法人玉川学園
受賞システム名 CHaTNet
システム概要 教育活動を支援するネットワーク・システム
活用サーバ PCサーバ
端末台数 約700台
システム稼働時期 1998年4月
  ■ 受賞のことば
小原 芳明 氏
理事長
小原 芳明
玉川学園では、コンピュータやネットワークへの取り組みを積極的に推進してきましたが、今回コンピュータを専門とする方々から最優秀賞として表彰されるということは、私たち教師のみならず、常日ごろ道具として使いこなしている子供たちにとっても大きな自信や励みになると思います。この受賞を「CHaTNet」をさらに良くしていくための大きなステップとしていきたいと思います。
  ■ 組織概要
学校法人玉川学園http://www.tamagawa.ed.jp/index.htm
1929年に設立。幼稚部・小学部・中学部・高等部から、大学・大学院までが同一キャンパスにあり、総合教育を特長とする。 "円満で個性的な人格を育てる総合的な人間教育" である、「全人教育」を目指す。
玉川学園
  ■ システム開発の背景
波里 純次 氏
CHatNetセンター
課長補佐
波里 純次
幼稚部から大学院まで総合一貫教育を実践している玉川学園。同学園の掲げる教育理念の1つに「教育は、子供と親と教師の3者が協力しあって共通の目標に向かっていく」というものがある。子供(Children)と家庭(Homes)、そして教師(Teachers)の三位一体の教育、それを実現させるコミュニケーションツールが今回受賞対象となった「CHaTNet(チャットネット)」だ。

この「CHaTNet」の基本となる部分は、学園内全域に展開されたLAN上で運営されるグループウェアである。元々は、教師だけのコミュニケーションツールとして使っていたシステムを発展させることからスタートした。しかし、単なる教師と生徒のコミュニケーション用のツールではなく、子供・保護者・教師間のコミュニケーションを深めるためのツールとすることを目的として開発が進められた。

「学校の子供たちの様子を、家庭にいながら保護者の方に理解していただくために、「CHaTNet」上に様々なフォーラムを作る。それを見ていただいた保護者の方から様々なご意見をいただく、コミュニケーション主体のネットワークです」

だが、「CHaTNet」開発の難関は、いかに保護者に参加してもらうかであった。「CHaTNet」に保護者側が加わったのは1998年。しかし、当時は一般家庭におけるPCの普及率も低く、学内に展開された「CHaTNet」サーバにアクセスするために必要なインターネット接続環境も揃えている家庭は少なかった。まだ高価な品であったPCを家庭に導入してもらうために、「子供を1回海外旅行に連れていくのと比べれば、PCのほうが投資効果が高い」と説得した時期もあった。開始当初は、数百しかいなかったユーザ数も、現在では全体の75%がIDを取得し、常時4000ユーザが活発に参加するまでに成長させていった。

保護者向けのPCおよびインターネットの設置サポートも当初は専門の業者に委託していたが、現在では学内にサポートダイヤルを設置して対処し、保護者には「CHaTNet」のクライアントアプリケーション一式を収録したCD-ROMを配布することで、ナローバンドユーザでも気軽に参加できるよう配慮を加えた。
  ■ システム構成図
システム構成図
  ■ システムの特長
「CHaTNet」は、グループウェア用サーバ7台および動画配信用と一般公開用のWebサーバで構成されている。 このうち、グループウェア用サーバには、保護者や生徒など参加者だけがアクセス可能であり、IDおよびパスワードが必要となる。「CHaTNet」クライアントアプリケーションは、アイコンを多用したグラフィカルなインタフェースを採用し、各学部(または教師・保護者)ごとに、基本的な操作は統一されている。この「CHaTNet」クライアントアプリケーションは、プラットフォームを選ばないため、各個人がプラットフォームのアーキテクチャの違いを意識せずに操作できるのが特長だ。

各ユーザは、主にフォーラムと呼ばれる電子会議システムを通じて「CHaTNet」を利用する。教師から保護者への連絡事項をはじめ、保護者から教師への欠席連絡、購買部へのオンライン注文など、学校生活のさまざまな局面で活用されている。児童・生徒は小学校4年生から高校3年生までが参加しているため、異なる学部の生徒とコミュニケーションをとることが可能になる。リテラシー教育はカリキュラムに含まれているが、このコミュニケーションを通じて、児童・生徒はネットワーク上での礼儀作法やタブー、そして読み書きの能力を自然に身に付けていく。学習の過程で著作権に抵触するような書き込みが発生しても、生徒が自発的に教えあう事例もあるという。

「教師が頭ごなしに指導するのではなく、生徒が自ら体験し、勉強してもらうという"ミニ・インターネット"になっています。ここで学んでから、広大なインターネットに出てもらう、という意味合いも含んでいます」

さらに、電子メールなど、児童・生徒に割り当てるサーバの容量を比較的厳しく制限することで、トラフィックの爆発を抑えるとともに、使いながら自然に画像の圧縮といったPCを扱う技術を学ぶ素地にもなっている。

また、教師1人ひとりがPCを積極的に活用し、「CHaTNet」の"鮮度"を保つ努力をしているという点も隠れた特長だ。常にデジタルカメラを携行して、随時、「CHaTNet」に掲載することで、生の児童・生徒の学校生活を保護者に知らせることができる。 さらに、スキー学校などの校外学習の際には、PCやカメラ等の機材も携行し、生徒がどんな環境で生活しているのか、一体どんな食事をしているのか、という学習の様子を静止画や文字だけでなく、動画の生中継も適宜利用して配信している。

「CHaTNet」は、ネットワークだけでなく、ISDNを利用したTV会議システムを海外校との交流に活用するなど、IPベースの通信に縛られず、通信手段の長所を活かした運用法になっていることにも注目しておきたい。
デスクトップ 日直日誌
デスクトップ 日直日誌
  ■ システムの将来展開
臼井 和夫 氏
CHatNetセンター
センター長
臼井 和夫
現在はコミュニケーションの場として存在している「CHaTNet」だが、今後はデジタル教材等の開発を進め、さらに学習に活かす方法を模索している。

「教師のレクチャーや黒板という従来のツールに加え、子供が教室に居なくても自分で学習を展開するという"主体的学習"がPCを使うことで可能になる、そういう状況をつくっていきたいと考えています」

また、学園全体業務システムとの連携も視野にいれているという。システムとしては、現在の「CHaTNet」を支えているグループウェアはただの「入れ物」でしかないという認識を強く持っているという点に注目したい。必要なのは、器ではなくコンテンツだという強い信念が「CHaTNet」を自然で活発なコミュニティーを育む土壌となっていることは間違いない。