|
|
受賞者 |
: |
ダイコク電機株式会社 |
|
受賞システム名 |
: |
MATRIX |
|
システム概要 |
: |
100%Javaアプリケーションを実現した Web対応差異管理および在庫管理システム |
|
活用サーバ |
: |
UNIXサーバ |
|
端末台数 |
: |
30台 |
|
システム稼働時期 |
: |
2002年4月 |
|
|
| |
■ 受賞のことば |
|
|
|
|
制御システム 事業セクタ 製造グループ グループ長 栢森 啓 氏 |
|
|
『誰もが使え』『人の役に立ち』『人を縛らない』『制約条件に縛られない』システムにしようと考え、オープン・システムのポリシーのなか、100%Javaでこのシステムを構築しました。標準化された新しい技術をうまく使い、特定情報産業メーカーの技術に依存しないことで、業務システムソフトウェアの寿命をのばし、自由な運用環境選択を実現しました。コンピュータ・ユーザーズシステム・アワード優秀賞の2年連続受賞は、大変光栄に存じます。今後も『人の役に立つシステム作り』をしたいと思います。 |
|
| |
■ 組織概要 |
|
|
ダイコク電機株式会社 (http://www.daikoku.co.jp/)
昭和39年にダイコク産業株式会社として創立され、昭和48年に名古屋営業所が分離・独立し、ダイコク電機株式会社として設立された。遊技場業界向けにマイクロコンピュータ応用電気機械器具や部品の開発、製造、販売などを行っている。 |
|
|
|
| |
■ システム開発の背景 |
|
|
遊技台部品の研究開発から販売などを行うダイコク電機株式会社。単なるパーツ供給だけでなく、遊技場のシステム開発も手がける。2002年11月に東京証券取引所・名古屋証券取引所第二部に新規上場を果たしたが、上場を果たすためにはどうしても超えなければならぬ壁があった。
ダイコク電機が上場を目標に掲げたのは2000年5月。この時、監査法人から標準原価の導入や差異分析の導入など、管理会計の方法を改善することを求められた。しかし、同社が製造する製品に組み込まれる材料の種類は軽く2万点を超える。その1つひとつに対し、標準原価と実際の仕入れ原価の差を示す「原価差異」や、帳簿上の在庫と棚卸し在庫の差を示す「在庫差異」をこれまでの業務処理で達成するのは無理があった。
「監査法人の指示に対し、社内でどう対応するかを検討しましたが、これまでの表計算ソフトと手計算では、差異分析導入をスピーディーに行うことが不可能でした。そこで、計算の正確性とスピードを備えた情報システムの構築に踏み切りました」
この情報システムの構築に際し、すでに稼働していた基幹システムに手を加えるという選択肢もあったが、基幹システムは標準原価への対応や在庫評価方法の変更などでたくさんのバックログを抱えているなか、根幹の部分の設計変更も同時並行に行うのは工数や時間の面で大きな問題があった。そこで、差異分析の部分は基幹システムとは別に設け、両者を連携させる仕組みが採用された。
しかし、この差異分析システムの構築と株式上場は同時進行させなければならなかった。システムの構築の作業を進めると同時に、差異分析を盛り込んだ新しい業務をユーザに定着させる必要があった。一方で、連携する基幹システムのデータの流れも把握しなければならない。プロジェクトは業務を徹底的に知ること、それを将来のユーザに伝えることから始まっていった。株式上場に必須とされた新しい原価計算の方法や原価差異分析のやり方などは、システム設計と並行して進められた。すなわち、このシステムの構築は正しい業務のあり方を広めるツールともなったのだ。
「監査法人と当社の経理と一緒に、対応する内容の確認から始めました。未経験の新しい業務をどうすればユーザにさせることができるかという点を踏まえつつ、どのようなシステムを構築すればユーザ側にすんなりと受け入れてもらえ、業務が遅滞なく行えるようになるかという観点で仕様を決めていきました」 |
|
| |
■ システム構成図 |
|
| |
■ システムの特長 |
|
|
| |
|
総務センタ IT推進チーム 西山 美春 氏 |
|
|
制御システム 事業セクタ 製造グループ グループ長 栢森 啓 氏 |
こうして生まれたのが「MATRIX」。2万数千にも及ぶ材料の1つひとつに対し、差異分析を行うためのシステムだ。基本的な情報は基幹システムから入手するが、基幹システムで取り込みを行っていないデータは担当者が端末から必要データを入力し補完する。基本的なユーザインタフェースは、すでに社内で稼働していた勤怠管理システム「Prelude」と統一されている。クライアントからは専用の端末を用意しなくても身近にあるPCを利用してシステムにアクセスすることが可能だ。オープン・システムのため稼働プラットフォームを選ばない。
「『MATRIX』 の操作画面は、入力欄やボタンの配置まで『Prelude』と全く同じになるように、インタフェースを作りました。ユーザが操作するたびにいちいち考えなくても済むように作り込んでいます。12種類ある帳票はPDF(Portable Document Format)で閲覧できるようになっていますが、レイアウトはもちろん、全部のインタフェースを統一し、印字フォーマットも統一しました。また、このデータは、CSV(Comma Separated Values)と してダウンロード可能になっています」
「MATRIX」の設計にあたっては、インタフェースの統一は格別の注意が払われた。このシステムはマネージャ側の利便を図るものではなく、業務担当者がスムースに業務を遂行するためのものなのだ。そのために直感的に操作できるインタフェースの設計には実際に開発を行った企業と緊密なやりとりを行って作り上げたものだ。
「MATRIX」の導入によって、差異分析が締め切り5稼働日目までに仕上がるといった月次処理の迅速化、人員効果向上による集計コストの削減などが達成できたが、同時に特定の担当者が自分の勘と経験、そして記憶を頼りにしていた業務内容が「MATRIX」に集約されることにより、担当者と異なる社員でも差異原因を抽出できるようになったという。
「これまでの基幹システム上だとデータが埋もれてしまい、どの材料で差異が発生するのか、根元まで突き詰めて調査することが不可能でした。これまでは、それが分析業務がちゃんとできない言い訳になっていましたが、『MATRIX』によって、徹底的に追跡することができるようになりました。業務の中身をオープンにして分析することで問題点を顕在化させる、いわば『業務をガラス張りにする』ためのシステムなのです」 |
|
| |
■ システムの将来展開 |
|
|
差異管理システムとして生まれた「MATRIX」だが、システムリリース後にユーザの声を受けて、さらに詳細な管理のできる部品・製品在庫管理機能が追加された。
また、「MATRIX」によって、これまでの部門ごとでクローズしていた集計から報告にいたる業務が、部門を越えて集計から分析と改善を経て報告する形に変化しつつあるという。人海戦術だった業務が知識労働的仕事へ移行し、知的労働の生産性も上がっている。基幹システムのサブシステム的位置づけのツールだった「MATRIX」は、現在基幹システムと肩を並べる重要な社内システムに育っている。ただ業務を早く、効率よく使う道具としてではなく、さらに経験を重ねて、「もっと早く、もっと効率よく」を狙って改善が進められている。 |
|
| |
|
| | |