JEITA 社団法人 電子情報技術産業協会
ミッドレンジコンピュータ・ワークステーション業務委員会
平成12年度ミッドレンジコンピュータ・ワークステーションに関する市場調査報告書
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最優秀賞 優秀賞 優秀賞
優秀賞 : iモード対応勤怠管理システム Prelude (ダイコク電機株式会社)
受賞のことば 組織概要 システム開発の背景 システム構成図 システムの特長 システムの将来展開
ダイコク電機株式会社にて
受賞者 ダイコク電機株式会社
受賞システム名 Prelude
システム概要 iモードおよびWebブラウザより出退勤打刻、外勤内勤打刻が可能な勤怠管理システム
活用サーバ UNIXサーバ、PCサーバ
端末台数 420台
システム稼働時期 2000年12月
 ■ 受賞のことば
西山 美春 氏
総務センタ
IT推進チーム
西山 美春
「情報システム構築時に、管理部門やIT部門主導でシステム構築を行うと、管理する側が管理しやすいシステムで、実際使う側のユーザが使用しにくいシステムになってしまうことがあります。そこで、今回は使う側の立場に立ったシステム構築を目指しました。その点が評価されたことを、大変喜ばしく思っております。
今後も『人の役に立つシステム』を目指し、業務の効率化に貢献できるシステム構築を行ってまいります」
voice
 ■ 会社概要
ダイコク電機株式会社 (URL : http://www.daikoku.co.jp/

昭和39年にダイコク産業株式会社として創立され、昭和48年に名古屋営業所が分離・独立し、ダイコク電機株式会社として設立された。
遊技場業界向けにマイクロコンピュータ応用電気機械器具や部品の開発、製造、販売等を行っている。
外観
 ■ システム開発の背景
ダイコク電機株式会社は、名古屋市の中心部にある本社の他に、事業所が3カ所、拠点が全国に12カ所ある。同社には、コアタイム以外はあらかじめ希望した時刻の出退勤務が可能な「マイライフ制度」や、5年ごとに最長1カ月の長期休暇を取得できる「生きがい休暇制度」といったユニークな制度がある。また、モバイル勤務、時差勤務、みなし勤務といったさまざまな出勤体系もある。今回受賞した「Prelude」システムは、これらの様々な勤務体系を考慮し、さらに携帯電話のiモードを使った出退勤打刻や外勤内勤打刻を導入して会社全体の勤怠管理を行うことを目的に構築されたものである。

「勤怠管理用パッケージを購入し、自社向けにカスタマイズを行い使用するという会社も多いですが、当社の就業規則と要求仕様を実現するにはパッケージ製品のカスタマイズでは実現が難しいという問題がありました。そのため、開発依託をした方が当社の就業規則と要求仕様に適合したシステムの開発が見込めるのではないかということで、大変な作業だということは重々承知の上で、仕様を固めるところから開発することに決めました」

今まで使用していたシステムでは当社の就業規則に準じた管理ができず、毎月の締め日前後には各部署に配置されていた20人以上の勤怠担当者がタイムカード処理・勤怠管理処理に追われていた。また、モバイル勤務等の新しい勤務体系・就業管理に対応する必要もあった。

20人以上いる勤怠の担当者を撤廃し、かつ処理の迅速化、正確性を図ること、モバイル勤務等の新しい勤務体系・就業管理に対応すること、社員一人ひとりが自分のことを自分で管理できるようにすること、締め処理後のデータチェック作業を削減しスムーズに給与システムへデータ転送が行われるようにすることなど、最終的に、人事担当者が簡単なチェックだけで処理ができるシステムを構築することを目指して開発が始められた。

また、既に基幹システム上で稼働している給与システムへの仕様変更は極力避けるために、給与システムに転送する際のインタフェースは、旧システムから引き継ぐこととした。
給与システムへの接続はGatewayサーバを経由して接続を行っている。
 ■ システム構成図
システム構成図
 ■ システムの特長
構想段階の1999年時では、現在のように携帯電話でインターネットを利用するようになるかどうかもわからない時期であった。しかし、iモードを利用して打刻することはかなり早い時点で決定された。iモードを選択したのは、会社で配布している携帯電話がiモードというのが大きな理由である。

「勤怠管理専用の端末を用意しなくても、身近にあるもので使えるようにするということを考えました。ハードウェアについても特定の機種やOS、ブラウザに依存しないよう配慮しています。また、外出している社員でもiモードから打刻可能なシステムを目指しました」

このシステムを利用する社員が使いやすく、確実に定着するシステムを構築することを念頭に置き、ユーザの要求や意見を取り入れてシステムを開発するプロトタイピング手法を用いてレビューを行っている。さらに、出先の支店営業所社員の意見を取り入れた結果を反映させて仕様を確定した。

20代から60代までの幅広い年齢層の社員全員を対象にしているため、見て直感的にわかるシンプルで機能的なユーザインタフェースには特に配慮した。Webブラウザからは、届出申請や打刻修正、勤務状況や休暇申請状況等の照会ができるようになっているが、一画面にすべての項目がおさまるようになっている。徹底して利用者を重視した設計を行っている。

「パソコンはちょっと取っつきにくいという方も手こずることもなく導入できたので、そういう意味でも成功したと思っています。『iモードで打刻できるようになってすごく便利になった』という声は聞きますが、クレームは非常に少ないです」

さらに、ログイン後のデフォルト画面“ToDo(MustDo)一覧”では、打刻忘れや遅刻早退の届け出忘れがある場合は、対処しなければならない仕事の発生日、発生理由、対象者、達成期限、指示内容の情報と共に処理対象画面へのリンクが出現し、ユーザに処理を促す配慮がされている。“ToDo(MustDo)一覧”では やらなければならない仕事を“効率良く伝える仕組み”と、やらなければならない仕事を“管理する仕組み”を作ることで、自己管理のできる“人を育てる仕組み”を実現することを目標としている。

定性的効果としては、旧システムでは就業規則・諸規程に合わせて勤怠担当者がデータ修正等を行っていたが、自分で自己管理する新システムの導入後、就業規則・諸規程に無頓着であった社員も、就業規則・諸規程を意識するようになったという。
iモードからの打刻画面打刻時間修正画面
iモードからの打刻画面打刻時間修正画面
 ■ システムの将来展開
このシステムを利用する社員の側は、現在のシステムに満足しているということだが、開発者側としてはさらなる要望に応える準備もある。

「このシステムは、業務システムではなく就業管理のシステムです。現在、就業管理については必要十分な機能を盛り込むことができたため、就業管理について新しい機能を盛り込む要件がありません。しかし、システムというものは使う前にすべてを想定できるわけではありません。要望が出てきた場合は、二次開発までを検討しています。システム全体というわけではなく、管理部門や運用部門という枠のなかでのバージョンアップになると思います」

システム開発の根底には様々な勤務体系への対応がある。このため、たとえ就業規則が変更になったとしても、すぐにシステムを作り直す必要がなく、大幅な変更でない限り、シフトパターンを増やして、その該当パターンで網羅することができる。

今回のシステム構築は、利用者重視のシステム開発基本理念、iモードの選択という先見の明といった要素が揃ってこその成功だったといえるだろう。また、次の活動を実施する前にこれまでの活動内容を確認するPDCA(プラン・ドゥ・チェック・アクション)サイクルを取り入れた勤怠管理は、会社と社員の双方に高い効果をもたらすことができるだろう。
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