JEITA 社団法人 電子情報技術産業協会
ミッドレンジコンピュータ・ワークステーション業務委員会
平成12年度ミッドレンジコンピュータ・ワークステーションに関する市場調査報告書
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最優秀賞 優秀賞 優秀賞
優秀賞 : 健康管理システム ヘルスバックス (財団法人 宮城県予防医学協会)
受賞のことば 組織概要 システム開発の背景 システム構成図 システムの特長 システムの将来展開
宮城県予防医学協会にて
受賞者 財団法人 宮城県予防医学協会
受賞システム名 ヘルスバックス
システム概要 同協会健康診断基幹システムに蓄積されている健診データを受診企業・団体に配布することにより、受診者の健康管理と保健担当者の負担軽減を支援するシステム
活用サーバ PCサーバ
端末台数 26台
システム稼働時期 2001年5月
 ■ 受賞のことば
浅野 俊弘 氏
専務理事
浅野 俊弘
「医療分野も規制緩和の時代です。財団法人といえども他健診機関との差別化を図っていかなければなりません。今回のシステム開発が電子情報技術産業協会様より評価をいただき、優秀賞を受賞しましたことは大変光栄でございます。今後とも、宮城県民の健康づくりに貢献してまいります。本当にありがとうございました」
 ■ 組織概要
財団法人宮城県予防医学協会

病気の予防について各種の活動を行い、国民の保健と福祉に寄与することを目的に設立された。集団健診や保健相談など、宮城県民の健康と福祉に役立つ活動を地域の医療・保健機関と協力して推進している。
外観
 ■ システム開発の背景
菅野 徹
事業管理部
情報管理課 課長
菅野 徹
voice
財団法人宮城県予防医学協会では、人間ドックや生活習慣病健診といった健康診断業務、および福祉の向上を目的とした教育指導業務や普及広報事業といった種々公益活動を行っている。

同協会では、健康診断基幹業務の入力データすべてをPCサーバ+COBOL環境で処理している。これまでは、健診結果を紙で提供するとともに、要望がある場合にはMOやフロッピーディスクなどで提供してきた。しかし、IT化が進み、健康診断データの活用を希望する企業が増えてきた。しかしながら、全国共通の健康情報を管理する団体というものは存在しない。

今回受賞したシステムは、データフォーマットの統一に加えて、データを有効活用するためのアプリケーションを無償提供することを第一の目的として開発されたものである。

「健康管理システムのパッケージにもかなり種類があります。システムの体系や用途に合わせたカスタマイズも必要ですし、機能面とコスト面を考慮すると、新しいパッケージは導入しにくいというのが現状です。そこで、打診のあった企業さんとご相談しながら作り上げたらどうだろうかというのが開発の大きなきっかけでした。我々は医療機関ですが、精度・スピード・コストパフォーマンスをトータルで考えて、お客様の満足度を追求していかなければなりません」

このシステムによる利点は大きい。利用する側からすると、健康管理に従事する保健担当者の負担は軽減され、協会側としてはユーザの固定化へとつながる。

「もちろん公益団体ですので、健康管理に寄与しなくてはなりません。健康診断後の健康管理を自社内で行えるように指導するというのも大きな目的です。我々は、健診の1から10までをお手伝いできればと考えています」

「ヘルスバックス」は、先に使用していた人間ドック用ドクター支援ソフトウェアに改良を加える形で開発したため、技術的にはそれほど難しくなかった。しかし、専門の開発者ではないので、通常業務と並行しながらの開発は大変だったという。
 ■ システム構成図
システム構成図
 ■ システムの特長
塚本 英典 氏
健診開発部
渉外第二課 課長
塚本 英典
誰もが簡単に操作できることが、「ヘルスバックス」開発における最大のポイントである。事務処理よりユーザの利便性を重視し、例えばパソコン操作に慣れていない方でもワンクリックで操作可能で、しかも簡潔で分かりやすいインタフェースを提供することが開発コンセプトである。

「我々でも健康管理用のパッケージを使用して設定を行った時に面倒だと感じたことがあります。保健担当者の使いやすいものを提供しようと考えた場合に、健診をしている我々が一番解決すべき問題点について理解しているのではないかと考えました。「ヘルスバックス」は無償で提供するものですが、せっかく配布しても使ってもらわないと意味がありません」

アプリケーションはPC用の簡易プログラムツールで作成されているため、画面上だけでは足りない部分も、PC用の表計算ソフトに流し込んでユーザ側でカスタマイズすることができる。また、グラフの改良を行ったことにより、グラフィカルな結果画面を見ながらのアドバイスも容易になった。

「実際に個人面談や産業医さんで使っていただいていますが、クリックひとつで操作でき、事前に資料を出して用意しておく必要もないので、重宝しているようです。データ提供システムとしてよい形になったと思います」

「ヘルスバックス」の基本となった人間ドック用システムは、ワンクリックで操作できるというわけではなく、内容も特定の範囲に限定されていた。今回そこにあらゆる健診項目を盛り込み、さらに過去5回分の健診データを提供し、検索結果とグラフが同時に表示できるように改善されている。

「一般的に健康診断の判定というのは、トータル/標準/基準値でしか見ていません。しかし、今言われているのが、個人基準値があるのではないかということです。コレステロール値が高くてちょっと標準からはみだしていても、それがその人にとっては正常の範囲だということはあると思います。それは経年管理してみないとわかりません」

医療機関という性格上、ソフトウェアそのものではなくその後の展開が重要だという。同団体では、「ヘルスバックス」を会社や部署ごとの健康の比較、企業の性格や企業としてどういう位置にあるかという事を測ることが可能なツールとして捉えている。
身体データ画面健康診断結果通知書
身体データ画面健康診断結果通知書
 ■ システムの将来展開
同団体では、現在バージョンアップを検討しており、県内平均との比較、同業他社との企業健康状態比較、さらに二次検査結果との比較等、企業管理を「ヘルスバックス」ですべてカバーすることを目標にしている。これによって、企業における健康管理の労力と費用負担は確実に減ると期待されている。

「無償配布しているアプリケーションなので使い方はまったく自由です。ただ、どのような使い方をされているのかをリサーチし、要望があればバージョンアップしていきたいと考えています」

たとえばLANを介して利用したいという要望があれば、データベースを導入して、ネットワークを介したデータのやり取りも検討していきたいという。

「現在はスタンドアロンのシステムですが、PCサーバ用のデータベースに移行することも視野にいれています。将来的には、このシステムを発展させることで、協会全体の基幹業務でも活用できるようになります」

医療にもサービスが要求されている現在、情報提供を数値の羅列ではなく、健康管理の事後指導として役立てる試みは重要である。同団体では、健康管理のニーズを把握し、これまでの経験/知識の積み重ねを活かしたシステムを構築することで、的確な事後指導を可能にした。このような手法が、将来的な健康管理の新しい流れを作っていくのではないだろうか。
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