社団法人 電子情報技術産業協会 ミッドレンジコンピュータ・ワークステーション事業委員会 JEITA
コンピュータ・ユーザーズシステム・アワード 2000
平成11年度 ミッドレンジコンピュータ・ワークステーションに関する市場調査報告書
TOP PAGE 審査内容 受賞理由 受賞システム紹介
最優秀賞 優秀賞 優秀賞 優秀賞

最優秀賞 : 市川市360+5情報サポートシステム (千葉県市川市)
■ 受賞のことば ■ システム開発の背景 ■ システム構成図 ■ システムの特長 ■ システムの将来展開
市川市長 千葉光行氏(右)
受賞者千葉県市川市
受賞システム名市川市360+5情報サポートシステム
システム概要インターネット、およびコンビニエンスストアに設置されている情報端末から行政情報の閲覧や市営の公共施設の予約ができるシステム。
使用IT技術Java
活用サーバオフィスサーバ
端末台数コンビニ端末1,686台、公共施設12箇所
システム稼働時期2000年4月
■ 受賞のことば
「このシステムは、利用者である市民のみなさまをはじめ、多方面から高い評価をいただいています。市長はもちろんのこと、私たちも市民に役立つシステム、という実感を得ており、嬉しく思っています。今回の受賞を励みに、コンテンツの充実を図り、また行政・民間・利用者の連携を深め、もっとみなさまに利用していただけるシステムの開発に取り組んでいきたいと考えています」
井掘幹夫 氏
企画政策部
情報システム課
課長
井掘幹夫
■ 組織概要
市川市役所
URL : http://www.city.ichikawa.chiba.jp/

市川市では、今回受賞した「市川市360+5情報サポートシステム」をはじめ、予算・決算など各種資料の情報公開や、動画や音声を用いたマルチメディアサービスなど、電子自治体への取り組みを全国に先駆けて積極的に推進している。
外観
■ システム開発の背景
「市川市360+5情報サポートシステム」のプロジェクトは、1998年に市川市役所内の若手が中心となってチームを結成し、スタートした。目的は、インターネットや情報端末から行政情報の閲覧や市営公共施設の予約ができるシステムの構築である。

このプロジェクトの特徴は、情報端末を設置する行政サービスの拠点として、地域に密着したコンビニエンスストアに着目したことにある。その背景には、市川市が持つ東京のベッドタウンとしての側面があった。

「市川市民は、昼間は東京都内の会社や学校に行く方が多いんです。ということは、市の行政区域内という限られた場所で、しかも朝9時から夕方5時までという限られた時間内では市民に十分なサービスが提供できない。そこで都内でも24時間ノンストップのサービスを実現できないだろうかと考えた末に、身近に数多くの店舗が存在し、しかも24時間オープンしているコンビニに注目したのです」

コンビニ各社とも市川市の提案に積極的に取り組み、2000年4月現在、サービスを提供する端末数は1686台、2001年2月にはさらに約1000店舗の拡大が予定されている。技術的にも、コンビニが運営しているネットワークシステムのノウハウを活かすことができたという。

「コンビニに提案する際、市川市だけではなく、他の自治体も相乗りできるシステムにすることを強調しました。例えば千代田区にオフィスがある市川市民は、千代田区の端末でも市川市の端末と同じように利用できれば便利ですから」

コンビニとの連携を考えるうえでは、災害時における情報とネットワークシステムの強さも動機の一つになっている。

「阪神大震災の2日後に現地を訪れたのですが、被災地であるにもかかわらずコンビニには全国から物資が集まり、情報伝達の場としても機能していました。こういったコンビニの強みを自治体が使わない手はない、そう考えました」

こうしたさまざまな取り組みを経て、2000年4月に「市川市360+5情報サポートシステム」のサービスが開始された。
■ システム構成図
システム構成図
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■ システムの特長
「360+5」には、“いつでも(365日)、どこからでも、だれでも(360°)行政サービスが受けられる”という基本理念が込められ、それがこのシステムの特長になっている。

「この理念を実現するには、インターネットからでも、コンビニの端末からでも、そして公共施設の端末からでも一つのデータベースを参照できるシステムを構築する必要がありました。特に、コンビニからインターネットのようにブラウズをする仕組みは今までになかったので、技術的な面でも、また考え方の面でも発想の転換が求められたのです」

市民の利便性向上を目指して実現したコンビニとの連携は、行政と民間のボーダーを越えた相互協力という意味でも画期的な事例といえよう。

「今までのように、自治体が限られた地域の中で全部自前で運営するという考え方は持たずに、公開情報と個人情報をきちんと区別したうえで、外へ出せる情報はどんどん出していこうと考えています」

実際のサービス内容は、市民参加型・双方向性を実現したものになっている。例えば、公民館やテニスコートの予約などができる電子申請窓口としての機能、市の職員だけではなく登録済みの団体が直接データベースを書き換えられる、地域の人々による情報発信の場としての機能などがある。また、リアルタイム情報の提供サービスとして、1時間ごとの大気情報(NO2濃度分布図)も掲載している。

■ システムの将来展開
「360+5」の基本理念をベースに、より広域的なネットワーク構築、コンテンツの充実に向けた取り組みが始まっている。

現在進行中のプロジェクトとしては、テレビ会議を用いた生涯学習システムや子育て支援システムがある。今年度中には、他の自治体、大学、市内の保育園・幼稚園など、公立、民間を問わず100以上の施設をネットワークで結ぶ予定である。

また、コンテンツを充実させていくために、市の職員による市民のインタビュー調査や電子アンケートなどを通して利用者の意見を集めている。

「住民票や印鑑証明の発行など、窓口の手続きをコンビニでも可能にして欲しいという多くの声がありました。そのためにはセキュリティが重要になりますが、ICカードや印刷物の改竄(かいざん)防止対策など、セキュリティ技術も高いレベルになってきていますから、今後システムに加えていく予定です」

情報提供サービスでは、道路状況や災害時における避難所の情報を衛星通信で提供するサービスや、バリアフリーへの取り組みとして、車椅子で利用できる施設や道路の段差を記載した福祉地図の提供サービスなどが計画されている。

サービスの有料化も検討されているが、ほとんどのユーザがお金を払ってもサービス提供を受けたいと考えているという。

「これまでの住民サービスは、すべて自治体だけで提供してきたので、経済的にもサービス内容にも限界がありました。今後は行政・民間・利用者がボーダレスに協力していくことで、さらに便利なシステムができると思います」

現在、電子自治体への取り組みは国家規模で行われている。その中で最も重要なポイントは、やはり市民の視点がどれだけ組み入れられているかにある。

「これからの電子自治体の運営には、従来の官的な視点、つまりトップダウンではなく、地域の方々と一緒に考え、つくり上げていくボトムアップ型の視点が必要です。市民の目線ですべて取り組む――これが私たちの基本姿勢なのです」

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