JEITA 社団法人 電子情報技術産業協会 JEITA
サーバ・ワークステーション事業委員会
コンピュータ・ユーザーズシステム・アワード2003
平成14年度サーバ・ワークステーションに関する市場調査報告書
HOME 審査内容 受賞理由 HISTORY 2002年 2001年 2000年
受賞システム紹介 最優秀賞 優秀賞 優秀賞 優秀賞
JEITA優秀賞:東亜工業労働組合ポータルサイト(東亜工業株式会社 労働組合)
表彰
受賞者 東亜工業株式会社 労働組合
受賞システム名 東亜工業労働組合 ポータルサイト
システム概要 組合活動を支援するWebポータルサイト構築システム
活用サーバ PCサーバ
端末台数 300台
システム稼働時期 2003年11月
  ■ 受賞のことば
林 和久 氏
東亜工業株式会社
労働組合
執行委員長
林 和久
現在、労働組合は賃金闘争主体の活動から、組合員の総合的な生活防衛、情報発信機関へと、質的な変化が求められています。東亜工業労働組合結成50周年という節目を迎える今年に、私たちの新たな取り組みが賞をいただいたのは感無量であります。今後とも、これからの時代の労働組合として発展していくべく、組合業務のIT化によるより一層のコストダウンおよび、労働組合と組合員とのコミュニケーションの強化を図っていきたく思います。
  ■ 組織概要
東亜工業株式会社 労働組合http://www.toaweb.co.jp/) [東亜工業株式会社Webサイト]
東亜工業株式会社 労働組合 東亜工業は、1944年に群馬県伊勢崎市にて航空機の木製部品製造工場として創業。その後、自動車部品、住宅部材事業に進出する。現在、群馬県太田市の本社工場のほか、全国に5つの工場と事業所を構える。
労働組合は1954年に設立され、組合員の総合的な生活支援を目的として活動している。
  ■ システム開発の背景
栗原 康英 氏
東亜工業株式会社
労働組合
書記長
栗原 康英
現代日本の労働組合は、賃上げ自体も難しくなってきた昨今の経済情勢、そしてフリーターの増加など若年層を中心とした労働価値の変遷もあって、求心力を急速に失いつつある。社会情勢が変化した現在、かつての労働組合のスタンスを保ちつつ、今の世に蔓延しつつある「組合離れ」現象の加速を止めることは難しい。労働組合はいわゆる“賃上げ闘争の担い手”という役目から、組合員が働きやすい職場環境を労働者の立場から会社側に提案し、実現することを目指す総合的な生活支援機関へと変貌することを迫られている。そこで障害となるのが、組合員に対する労働組合の認知度の低さだ。それを改善するには、これまでのような紙やミーティングを主体とした既存のコミュニケーションだけに頼らず、ITによって情報の交流を活性化する必要がある。

自動車部品と住宅部材の製造を行う東亜工業の労働組合でも、その存在を組合員に身近に感じ取ってもらいたいと考えていた。しかし、国内各地に工場が増えるにつれ、旧態依然とした紙や集会ベースでの情報伝達は限界が出てしまう。

「労働組合の事務所は本社にあり、本社に組合役員が集まって活動していたため、どうしても地方工場へ情報が速く伝わらない、という悩みがありました。もちろんメール等の手段も使っていましたが、今一つ組合員の“生の声”というのが伝わってきません。そしてなにより、労使協議の内容を伝えるという労働組合にとって一番大事な仕事も、紙をベースとした組合報を通じて配布するため、印刷や配布の手間や費用、そして地方工場まで配達にかかる時間が問題になっていました」

もちろん組合員同士の情報交流が疎遠、という悩みもあった。本社から離れた場所に工場が増えるにつれ、組合員同士は顔も知らないのはもちろん、労働組合が今どのような活動をしているのかがなかなか伝わらない。情報の伝達力不足への対応が必要とされていた。

同社では2年前から全社レベルでのネットワーク構築が進み、ネットワークとPCを利用した新しい勤怠管理システムが稼働していた。そこで、このインフラを利用した「組合員相互コミュニケーションのためのイントラネット組合ポータルサイト(以下労働組合サイト)」の構築が開始される。今年は労働組合結成50周年ということもあり、新しいことを始めるには格好のタイミングだった。
  ■ システム構成図
システム構成図
  ■ システムの特長
システム構築に際しては、組合費からシステム構築費用を捻出するため、予算の上限を低く押さえる必要があった。その点は、LAPP、つまりLinux+Apache+PostgreSQL+PHPというオープンソース由来の技術を組み合わせることで解決した。各工場と本社の間はVPN(Virtual Private Network)で接続されているため、どの工場にいても常に同じ情報が閲覧できる。また、管理パスワードを持つ者は、どの工場にいても随時内容の追加・更新が行える等、気軽に使えるシステムとなっている。

開発と並行して掲載する内容の検討も始まる。会社の各種規定の電子化や共有文書にはじまり、組合報のバックナンバーの蓄積といった静的な情報の蓄積はもちろんのこと、慶事や訃報の連絡機能なども付け加えられた。 この労働組合サイトで最も力を入れた機能は組合行事のカレンダー機能だ。

「組合役員が本社に月に数回集まり、執行委員会を開いていたのですが、“役員が集まって何をやっているのかわからない”という話を聞いた時に、なんとかこのギャップを乗り越える方法はないかと考えていました。だから組合活動の予定はもちろん、そこで何が行なわれ、何が決まったのか、行事でスキー旅行が行なわれた場合は、どんな感じだったのか、そんな情報を手軽に把握できるようなものを目指しました」

労働組合サイトにアクセスすると、まずこのカレンダーを目にすることになる。そこには行事の予定はもちろん、事業所ごとに異なる休日の情報も表示され、あの事業所の休日はいつか、ということも把握できるし、過去に行なわれた活動報告も随時参照できる。

こうした情報は、ログインのような個人を特定するための操作を介さずに誰でも閲覧できるというのも、この労働組合サイトの大きな特徴となっている。誰でも見られる環境を実現することで、組合員にとっては気楽に情報をチェックできるというメリットが生まれる。また、組合員名簿の閲覧も可能だが、こうした情報はプライバシー漏洩の危険がない程度まで簡略化されたものが提供されるなど、利用する側に必要以上の敷居を感じさせない配慮が随所に織り込まれている。

「さらに組合員同士のコミュニケーションの場として、簡単な掲示板機能も付けているのですが、まだ皆さん様子を見ながら使っている、という感じです。掲示板に質問があった場合は、掲示板に回答を書き込むだけでなく、質問した本人の名前が明記してあれば直接メールでも返答できます。『ツアーの宿泊先にタオルがあるか?』程度の質問でいいから気楽に使ってもらえるようなものにしたいと考えております」
労働組合ポータルサイトTOP 労働組合ポータルサイト管理者ログイン画面 サイト更新画面
労働組合ポータルサイトTOP 労働組合ポータルサイト管理者ログイン画面 サイト更新画面
  ■ システムの将来展開
労働組合サイトの導入は、紙文書の印刷や配布にまつわる手間が大幅に削減されただけでなく、組合員同士のコミュニケーションの円滑化ももたらした。そして、労働組合サイトの情報は会社側のスタッフも参照できるほどオープンな雰囲気で運営されている。今後は役員の選挙機能や組合の出張精算機能などの機能追加も計画されているが、常時PCを使う業務以外に携わる組合員のために、携帯電話を使った情報の閲覧にも対応が検討されている。