JEITA 社団法人 電子情報技術産業協会 JEITA
サーバ・ワークステーション事業委員会
コンピュータ・ユーザーズシステム・アワード2003
平成14年度サーバ・ワークステーションに関する市場調査報告書
HOME 審査内容 受賞理由 HISTORY 2002年 2001年 2000年
受賞システム紹介 最優秀賞 優秀賞 優秀賞 優秀賞
JEITA最優秀賞:教務情報システム(中京女子大学)
表彰
受賞者 中京女子大学
中京女子大学短期大学部
受賞システム名 教務情報システム
システム概要 発生源入力を採用した教育事務全般を支援する教務情報システム
活用サーバ PCサーバ
端末台数 150台(学生端末)
システム稼働時期 2003年4月
  ■ 受賞のことば
伊藤 迪治 氏
学校法人
中京女子大学
事務局 次長
伊藤 迪治
この春、中京女子大学ではアテネ五輪女子レスリング3階級に選手を送り出すことができ、そして、大学の運営面でもJEITAコンピュータ・ユーザーズシステム・アワード最優秀賞を受賞するなど、二重の喜びとなりました。

建学の精神である「自主・自立」に基づき、職員も学生もそれぞれに本学の一員であるという自覚を持って活動をしてきた成果を評価していただけたことは、大変嬉しく思います。
  ■ 組織概要
学校法人 中京女子大学http://www.chujo-u.ac.jp/
学校法人 中京女子大学 1905年に中京裁縫女学校として創立。人文学部および健康科学部の2学部と短期大学部、大学院から構成される。「自立・自律」の建学の精神に基づき、現在では「心身共に健全でたくましく英知と創造性を持って、人生を積極的に生きる女性の育成」を教育理念としている。
  ■ システム開発の背景
星田 紀幸 氏
学校法人
中京女子大学
学事課 係長
星田 紀幸
大学経営における少子化の影響が言われて久しいなか、大学側が「学生の満足度向上」を経営目標として打ち出すことは珍しい流れではなくなった。授業だけでなく施設の充実といったいわゆる“大学らしい”投資戦略を打ち出す大学は多いが、ITの普及により、学内の情報環境を整備することも学生の満足度向上に直結するという考えの大学も多い。その中でも中京女子大学は、大学側の業務と学生側の利便性の両面を向上するシステムを構築し、活用を始めている。

「教育機関全般に言えることですが、当然、本学も学生本位と考えています。学生の本学への満足度を向上させ、同時に定型業務の効率化も実現できないかと常に考えてきました。そこで、2年前まで使用していた教務全般のシステムを刷新し、学生サービスを更に推進するため、新たな教務システムを導入するに至りました」

同大学が10年にわたって運用してきた従来までの教務システムは、汎用機ベースで運用されていたため、情報の共有や取得がタイムリーに行いづらいといった問題があり、また情報の取得も紙などの様々な媒体にて対応する必要があるなど、今となっては非効率なシステムになっていた。

例えば、履修登録に関しても従来の教務システムではOCR(Optical Character Reader)を使用しており、読み取りミスや学生の記入ミスなどへの対応が難しいなどの問題があった。毎年4月からの新年度開始時には、学生と職員の双方が膨大な手間と時間を費やして履修登録を行い、学生からの質問への対応はもちろん、履修登録ミスが発生した場合は、その学生を呼び出して確認・修正作業を行う必要があった。その結果、全学生の履修確定はゴールデンウィーク明けになり、学生にとっては自分の時間割がなかなか確定せず、教員側にとっても履修者名簿がすぐ手に入らないという問題が生じていた。

そこで、履修登録や成績情報など、学生、教職員の双方で必要な情報を共有できる環境の構築と、教職員の定型業務の効率化を考え、今回のシステム導入に踏み切った。

この新教務システムの導入により、現在は学生自身による履修登録と履修確定ができるようになった。学生は、履修登録が完了して時間割が確定した時点で新しい時間割の入手と印刷ができ、教職員にとっても履修者名簿が即時に入手できるようになるなど、学生と教職員双方にとって大幅な手間と時間を削減できるようになった。
  ■ システム構成図
システム構成図
  ■ システムの特長
武原 剛士 氏
株式会社
NTTデータ九州
第一開発部
営業担当
課長代理
武原 剛士
従来の課題を克服すべく生まれた「教務情報システム」は、履修登録だけでなく教務事務全般を支援するシステムだ。情報の発生源である学生自身が直接履修をシステムに登録できるので、学生は自分の履修ミスを入力時点で知ることができ、かつ短時間で自分の時間割が入手できる。また、教員側にとっては研究室から直接成績を入力することで、これまで紙ベースで行っていた成績入力作業の手間が大幅に省略することが可能になる。

各端末は普通のPCだが、「教務情報システム」に接続するためにはサーバからクライアントアプリケーションをダウンロードして起動する方式を採用している。アプリケーションはサーバ側で管理されるため、インストールやアップデート作業の手間が省けただけでなく、アプリケーションをJavaで記述することにより、OSの違いを意識せずに使うことができる。

学生は履修登録だけでなく、自分の成績の確認も「教務情報システム」上で行えるようになっているが、これは同時に学生のプライバシー保護にも役立っているという。

「従来のように成績を掲示すれば、自分の成績とか、単位の取得情報が他の学生にも知られてしまいます。成績といえども、これは立派な個人情報です。個人情報が学生個人のものならば、自分のIDとパスワードでログインして確認できるほうが望ましいだろう、と考えました」

ログイン作業があることにより一定レベルのプライバシーは確保できるが、それをさらに高めるために、システムレベルでも高い秘匿性が盛り込まれている。アプリケーションサーバとデータベースサーバはネットワークに対し並列に設置するのが普通だが、「教務情報システム」ではあえてデータベースサーバをアプリケーションサーバの後方に設置した。データベースへのアクセスはアプリケーションサーバを介さないと行えないようになっている。いわばアプリケーションサーバがファイヤウォール的な役割を果たしていると言ってよい。さらにシステム内の通信はすべて暗号化されているため、パケットの盗聴に対しても安全性を確保している。

また、このシステムでは携帯電話の活用にも積極的に取り組んでいる。

学生は学内の情報処理室にあるPCからログインすることで、自分の時間割を随時確認できるが、履修していた科目が休講になった時は、自分の携帯電話に休講を伝えるメールが配信される。休講のメールはその授業を履修した生徒個人に対して送られてくるため、学生にとっては自分の予定をいち早く立て直すことが可能になる。

「大事なのは“学生と職員の双方にメリットがある”ということですね。片方だけが便利になっていては“何で私が”ということになります。学生の住所など学籍情報もこのシステムで管理していますが、その際に携帯電話のメールアドレスも把握することで、このような休講告知も円滑に行える。また、同じ休講告知を行うのでも、パソコン等のブラウザを利用してわざわざ学校のホームページ(電子掲示板)へアクセスして休講情報を読むのと、自分が持っている携帯電話に飛び込んでくるメールを読むのとでは、後者の方が即時性でも手間の点でも優れています。しかし、こういうメリットなしに学生に“自身の学籍情報の一部を自分で入力して管理する”ということでは、学生側にメリットがないため定着しづらいと思います。こうしたお互いのメリットを上手くシステムに盛り込んでいくことで、学生と大学側双方の満足度を高めることができるようにしました」

また、「教務情報システム」は思わぬ副次的効果ももたらした。「教務情報システム」に学生が接続できるPCは学内にある情報処理演習室に集中配置されているため、必然的に演習室の利用状況が高まり、結果として情報教育の一助になっているという。学生の“知的な欲求”を刺激する効果も多いに期待されている。
「教務情報システム」メニュー画面 休講通知メール発信画面 時間割のPDFを出力
「教務情報システム」メニュー画面 休講通知メール発信画面 時間割のPDFを出力
  ■ システムの将来展開
同大学では、今後も学生本位のITシステムを構築したいという。

「今後、学外からの履修登録や成績報告を行うことなど改善に努めるという案もあります。しかし、その際にはセキュリティに細心の注意を払った上で実現していく必要があり、なにより“学生は学校に来るもの”という大前提があります。まずは学生に対してこのシステムの利便性をしっかり定着させることを考えています。本学アリーナ(体育館)にネットワーク環境が整備されたこともあり、次の新入生からは、全学オリエンテーションの中でも『教務情報システム』のメリットを積極的にアピールしていきます。本学においては学生本位を念頭においたITシステムに関しての改革を更に推進していきたいと思います」