米国の情報機器アクセシビリティに関する法律の実態調査報告書

   第2章 連邦政府の関連政策


 1999年に発表された以下の2件の報告について、その概要を述べる。

1.情報技術アクセス諮問委員会(EITAAC)の技術標準最終報告

 アクセス委員会は、総労働力投資法508条の技術標準策定を政府機関、障害者団体、計算機メーカーなど各分野を代表する27組織からのメンバーで構成される情報技術アクセス諮問委員会(EITAAC:Electronic and Information Technology Access Advisory Committee)に委託していたが、その最終報告書 が1999年5月12日に発表された。

(1)概要

 「障害者がアクセスおよび利用可能」ということは,入力及び制御機能,機械の操作,視覚的および聴覚的に表示される情報へのアクセスを含み,障害者が電子機器・情報技術の通常操作機能の全てが実行できること意味している。
 このため、電子機器・情報技術にアクセスするための支援技術、補助装置を用いることによって、障害を持つ人も業務が遂行できること,また逆に、障害者が日常ベースで用いる補助器具(車椅子など)でアクセスが妨害されないこと,更に、電子機器・情報技術に付随するドキュメントやサービスもアクセスおよび利用可能であることなどを規定している。
 電子機器・情報技術の進歩は極めて早い。従って、確定した標準、固定したチェックリストでは、技術の進歩を阻害し、新技術の導入を遅らせる懸念がある。しかし、標準は明確に規定しないと、実施する上で問題が生じる。そこで、本最終報告では、必要なアクセシビリティのレベルとともに、研究開発段階にある他の技術的アプローチも、標準の中に記述することを提案している。

(2)対象となる障害

   @ 視覚障害
   A 聴覚障害
   B 肢体不自由
   C 会話障害
   D 言語,学習,識字障害
   E その他の障害
   F 以上の重複障害


(3)アクセシビリティのための一般標準

 全ての電子機器・情報技術に適用される、アセシビリティの必要レベルを規定する。

   @ 操作と情報アセシビリティに関する標準
   A 障害者がしばしば利用する補助器具との適合性
   B キュメントとサービス


(4)技術特定標準

 特定の仕様、または機能に関する技術標準である。

@ 理的キーボードをもつ電子機器・情報技術(に関する技術標準)
A オペレーティングシステムを持つプラットフォームにおいて、アプリケーションソフトウェアが走行する電子機器・情報技術
B Webベースの情報または応用を利用する電子機器・情報技術
C 通信機能を有する電子機器・情報技術(TTYを含む)
D ビデオあるいはマルチメディアを利用する電子機器・情報技術
E 情報取引機械(ATM,電子キオスク,POSターミナルなど)
F PDA(携帯情報端末)
G ネットワークとインターフェイスを行う電子機器・情報技術
H その他


(5)その他

 本最終報告書には、上記以外に以下が含まれる。

   @ 電子機器・情報技術の定義
   A 調達プロセス
   B 標準の改定
   C アクセシビリティの基本原則
   D 技術指針


(6)関連する米国内外標準あるいは標準検討委員会

 @ W3C WAI指針(第3章参照)
 A ISO TC159:ソフトウェアアクセシビリティ
 B ISO TC173:障害者のための技術システムと支援
 C ANSI 63.19:無線補聴器の適合
 D IEC TC100:障害者の必要性に適合する家庭電気機器用制御器(日本)
 E SOGITS N 1032 - EN for DG XIII:(欧州標準)
 F Nordic Standards for Accessibility


2.連邦通信委員会(FCC)の情報通信アクセシビリティ施行規則

 通信法アクセシビリティガイドラインは、1998年3月に発効しているが、その後連邦通信委員会(FCC:Federal Communications Commission)は、このガイドラインにもとづく255条の施行規則を1999年7月15日に発表した。この規則の概要は、次のように整理できる。

(1)アクセス機能の普遍化

@ 通信機器メーカおよび通信サービスプロバイダが、アクセス機能を後で追加すると、一般に高額で面倒な改造が必要となる。このような事態を避けるために、機器およびサービスのアクセシビリティを設計、開発、製造の全プロセスにわたって考慮することを求めている。このための規則として、製造業者及びサービスプロバイダは機器及びサービスのアクセシビリティ,ユーザビリティ及びコンパチビリティを評価するプロセスを開発しなければならない。

A 本条項のアクセシビリティ要求規定の対象には、通信機器および顧客構内設備の作動に不可欠なソフトウエアを含む。

B 消費者へ提供する情報、およびドキュメントもアクセス可能でなければならない。

C アクセシビリティ機能は、可能なレベルの範囲内で、全部の機器製品シリーズおよび全サービスに組込むことが必要である。コスト、その他の問題で、一部の製品、サービスにしか組込めない場合も、そのアクセシビリティ機能が、製品、サービスの全体にわたって、最大限のアクセシビリティを達成する必要がある。

D 本条項の規定は、個々の製品またはサービスの設計、製造に適用される。製造業者またはプロバイダは製品あるいはサービスのアクセシビリティを常にレビューし,アクセシビリティが「容易に達成可能」になるタイミングにおいて、それを組み込む義務がある。


(2)「容易に達成可能(readily achievable)」の定義と、本条項の強制力

@ 「容易に達成可能」とは、それを実現するためのコスト、実現方法の性質、投入可能な経営資源などを総合的に考慮し、個々に判断して決定される。

A アクセシビリティに問題があると考える消費者は、FCCに苦情を申立てることができる。FCCがその苦情を製造業者またはプロバイダに通告した場合、その対応策を30日以内にFCCに回答しなければならない。

B 製造業者およびプロバイダは、アクセシビリティ関連の消費者からの苦情受付窓口を設けなければならない。但し、消費者は、FCCへの苦情申立て際し、製造業者またはプロバイダの窓口に事前連絡をする必要はない。


(3)新技術対応

@ 本施行規則のアクセシビリティ要求規定は、ボイスメール(留守番電話)や双方向メニューのプロバイダ、及びそのサービス機能を提供するために使用される通信機器と顧客構内設備の製造業者にも拡張して適用する。
A 本規則の対象には、携帯電話、ポケットベル(ページャー)、発信者番号通知、IVR(音声応答システム)などを含む。但し、電子メール、インターネットWebページは対象外である。

(4)今後の動向

FCC委員長のKennard氏は、1999年10月14日の記者会見 で以下のように述べている。

@ 7月に発表した施行規則には、ボイスメールと双方向サービスへの対応を盛り込んでいるが、引き続きインターネット電話と、デジタルTVのクローズドキャプションについての検討を開始している。

A アクセシビリティ実現へ向けての企業の努力に関し、通信機器メーカーについてはNokia社とLucent Technologies社、サービスプロバイダについてはBell Atlantic社と、SBC Communication社のPacific Bell部門を賞賛する。

B 7月のFCC施工規則に対して、複数の会社が裁判所に異議申し立てをするという噂があるが、再考するよう強く求める。



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